カシスオレンジ

 実家に帰れば美味しいご飯が用意されているし、心配してくれた人がLINEのメッセージを送ってくれたりする。ひょっとすると、私は自分自身を孤立無援の可哀想な人間だと憐れむことで、ある種の自傷行為に及んでいたのかもしれない。

 『文豪ストレイドッグス』の太宰治は、「自分を憐れむな。自分を憐れめば人生は終わりなき悪夢だよ」と自己憐憫に陥ってしまった中島敦を諭すように言った。そうか──自分を憐れむために人は生きているわけじゃないんだ。

*─*─*

 2024年8月11日。大学時代の先輩にお誘いいただいて、先輩や同期と食事をともにする機会があった。楽しい話ができればよかったのだけれど、私の口から出てくる言葉は不安だったり、弱音ばかりで。楽しいはずの宴会の席を汚してしまったのではないかと不安に駆られながら自宅に帰ってきた。

 そんな時に思い出したのが先程の太宰治の言葉だった。みんな私に苦しい思いをしてほしかったわけではなくて、ほんの僅かでも楽になってほしかったんだ。だから、頭にへばりつく申し訳なさを振りほどいて、今夜はみんなに感謝しようと思う。

 ありがとう。また、いつか。

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